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2019/01/14 【部品交換】SEIKO PRESAGE SARK007
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【部品交換】SEIKO PRESAGE SARK007

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 はい。お久しぶりです。おそらく1年以上ぶりでしょうか。
しばらく時計から離れて無線、写真に行っておりました。私は流行りがあるので一度離れると戻るのが結構間が空いてからになってしまうのです。そういう方も多くおられると思います。
当然このページに書くネタも無く、コメントをいただいたという通知をメールで受け取った時に覗くぐらいで放置しておりました。
 そんな平和な時が流れていたのですが、ちょっとした問題が起きました。SARK007に異常な遅れ、ゼンマイ巻き切れが頻発するようになったのです。
元から日差-2s~-5sぐらいで、遅れ癖のある個体だったのですが、2018年10月ぐらい(もっと前だったかも)から急にゼンマイ巻き切れちょっと前ぐらい(残り稼働時間6時間~10時間くらい)になると2~3分遅れるようになりました。また、自動巻きで巻かれているはずなのにその効率が落ち、腕に装着して動きもあったのに時計が装着中に止まるという事例も起きたのです。

【原因を考えてみた】
 機械式時計をお持ちの方はこういった症状でピンと来るところがあると思います。SARK007が搭載している8R48Aは手巻き付き自動巻きのクロノグラフムーブです。買ってからそろそろ2年、一般にオーバーホール時期とされている頃でもあります。
 精度が落ちる原因はいろいろ考えられます。油切れ、磁気帯び、衝撃などによるヒゲの変形・・・
裏蓋スケルトンからムーブメントを見てみますと、テンプの動き、ヒゲの収縮運動には異常があるようには見えません。しかし、丸穴車が異様にすり減っているように見えました。

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↑全体的に、特に赤で囲ったところなどに丸穴車の摩耗がみられる

 マジックレバーの爪が噛みこんで、切替車の回転に合わせて引っかき、丸穴車を回転させて・・・ゼンマイを巻き上げている訳ですが、丸穴車の歯が摩耗してマジックレバーがうまくかみ合わなくなってしまい、巻き上げ効率が落ちているようです。こうなると、巻き切れ前に数分遅れるのも巻き切れで停止・再稼働を繰り返しているのではないかとも思えてきます。
 ということで、丸穴車が摩耗していることが不具合の原因であり、丸穴車を交換してやればまたまともに動いてくれるであろう、という結論に至りました。

【分解して交換】
 まともな人なら即刻セイコーに送って部品交換・修理を依頼するところですが、7Sや4Rのよくわからない部品がなぜかそこそこある私はこそこそ自分で部品交換することにいたしました。


個人で分解すると(裏蓋を開けると)保証が効かなくなります!
保証期間が切れて関係なくなっても、セイコーにオーバーホール出そうとして断られる可能性もあります。



 そうそう、忘れていましたが、あのフリーガーファイブMark.2もこっそりGMT仕様になっていました。4R37から例のGMTホゾ付き日送り車をもらってきて製作しました。


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↑ちゃっかりローターも4Rになっています。元は7Sなので手巻きがありません。

 ということで、8Rと同じく丸穴車軸を固定するブリッジがある、4Rで分解方法を試しておきます。(8Rが4Rベースなのですが)

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ネジを2つ外して

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持ち上げて外す。それだけです。外した時に何かが飛び出てきたりしたら困りますが、そういう事はないようです。これで安心して8Rの方も作業に取り掛かれるというものです。

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丸穴車を取り出しています。下に手巻き用の輪列がありますね。

次は、8Rをばらして、丸穴車を交換します。
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裏蓋にラップを掛けて、裏蓋外しで開けます。開けるときは反時計回りです。

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取れました。これでこのSARK007は暗黒の道に転落です。

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ブリッジを外しました。よく見ると、丸穴車が欠けていて、マジックレバーの爪がそこにピッタリ食い込んでいます。この状態では爪がロックされてしまい、ロクに巻き上げることができません。

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替えの丸穴車を取り付けます。マジックレバーが引っかかるので、このように片側(ローター軸側)を先に丸穴車に引っ掛け、次に反対側を引っ掛けます。

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切替車の穴にピンセットを差し込み、回転させます。これによって正常に組み立てることができているか試運転できます。正常ならマジックレバーの往復運動に伴い丸穴車が回転していることが分かるはずです。ある程度回していると香箱の板バネが跳ねるので、巻き上げられていることがよく分かります。

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↑取り外した丸穴車です。ガタガタになっていますね。


【丸穴車の歯が摩耗した原因】

 なぜこれほどまでに丸穴車が摩耗してしまったか。その理由は単純です。手巻き機能の使いすぎでしょう。
 4Rの分解写真で示した通り、手巻きの回転は丸穴車に伝わります。丸穴車(機械オモテ側の歯)を経由して角穴車に回転が伝わっていく仕組みです。それ自体は至って合理的な考えで、マジックレバーは板バネとして丸穴車を挟んで止めていますが、バネなので丸穴車にある程度以上のトルクが掛かれば回転を妨げることはなくなります。手巻きのトルクを丸穴車を通さず直接角穴車に伝えた場合も結局つられて丸穴車は回転することになるので、同じことです。

図1
↑自動巻き時のマジックレバーの動き


 しかし、マジックレバーと丸穴車は本来連動して動作するものであり、マジックレバーの丸穴車を順方向に引っ掻いて回転させる爪、逆方向から押して回す爪(機械ウラ側から見てローター軸側)はそれぞれ絶妙に丸穴車に対する負荷を緩めて動作しています。回転にかかわっている爪と反対側の爪はサメの歯状の丸穴車の歯の緩い斜面を滑るのであまり負荷になりません。また、「く」の字型になっている板バネのマジックレバーが往復運動することにより、丸穴車を両側から挟み込む力を緩めると同時に負荷になる側の爪を反対側に動かしています。これによって丸穴車がマジックレバーの負荷に打ち勝つべく回転するのではなく、マジックレバーの動きそのもので負荷に対抗している、つまり基本的には丸穴車の回転に作用するのとは反対側の爪が丸穴車の歯を滑っていく動作は丸穴車のトルクではなくマジックレバーの動きによる力により賄われています。
 それが、手巻きで丸穴車を回転させた場合はマジックレバーの両側の爪が丸穴車にとって負荷となります。この場合丸穴車のみが動くため、丸穴車の回転トルクによってマジックレバーの爪は丸穴車の歯を滑ります。負荷が100%丸穴車の歯にかかるわけです。部品を見れば分かりますが、丸穴車の微細な歯とマジックレバーの爪、どちらがより丈夫でしょうか。この丸穴車の歯をマジックレバーの爪が滑るという動作は根本的にマジックレバー側の力で賄われるべく設計されているということです。

 つまり、マジックレバー式自動巻き機構において、手巻き機能を作動させることは丸穴車の歯をひどく摩耗させるということです。
 
 7Sを長期間連続して使用していても、丸穴車の歯が摩耗していくようなことは見られませんでした。それが4R系列で手巻きをちょくちょく使用していたら(1か月に1回~3回くらいかな)これです。また、今回摘出した丸穴車の歯をよく見ると、マジックレバーの爪が当たる歯の機械ウラ側部分が摩耗しています。つまり、マジックレバーの爪によって丸穴車の歯が摩耗しているということです。この辺の状況証拠から、マジックレバー式自動巻き機構で手巻き機能を使うと丸穴車の歯がひどく摩耗するという事が考えられます。

 自動巻き時計で、手巻き機能はとても便利なものです。 週末に使用していない間に止まってしまって、月曜の朝に再び動かす際にとても重宝します。しかし、それを常用していると、または十分な巻き上げを手巻きでしようとすると、丸穴車を摩耗させていくことになってしまうということです。
 よく言われていることですし、説明書などでもメーカー側からアナウンスされていますが、自動巻きムーブメントで手巻き機能を利用するのは最低限にする方がより長持ちする、ということでしょう。


【関連記事】
➣すぐに分かる、機械式腕時計の仕組み
➣【レビュー】SEIKO PRESAGE SARK007 【動画付】

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腕時計の磁気帯びとは【大図解】

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上の写真は管理人の昔使っていたソーラーですが、磁気帯びで一度壊れました。
今日は腕時計の磁気帯びについて考えていきます。

〈内容〉
・"磁気帯び"とは:磁気帯びとは何か。時計に及ぼす影響は。
・磁気帯びの仕組み:磁化を考える。
・対策:対磁機能、基準。


【"磁気帯び"とは】
 磁気帯びとは簡単に言えば、時計が磁気を帯びる事です。
 時計の部品が磁気を帯びる、つまり歯車やゼンマイが磁石と化し、互いに力を及ぼし合って動作に影響します。機械式の仕組み〈➣リンク〉でも述べましたように、部品に余計な力が加わると、部品に働く力についての設計段階での想定を超え、正確な動作ができなくなります。
 ですから磁気帯びの影響を受けるのは歯車のあるアナログ時計だけで、デジタル時計は磁気帯びの影響を受けません。
 また、クオーツのアナログですと、モーター部分は磁気によって機能していますので、外部の磁場がモーターの機能の邪魔をする場合があります。
 機械式だと、ヒゲゼンマイなどが磁気帯びしてしまって大きな影響を受けます。

 磁気帯びによって働く力はもはや普通の誤差の範疇にはなく、相当大きな力で、そもそも時計が動かなくなってしまったりします。
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↑図の上の式のFはクーロン力、磁気力、下の式はローレンツ力を表します。(ローレンツ力は近似式)

 クーロン力[N]、これは電荷に働く力の事ですがrは電荷間の距離[m]、qは電荷[c]を表し、分母の距離の2乗から電荷の距離が小さいとクーロン力が大きくなる事などが分かります。ニュートン力学の重力[N]などはF=mgですからクーロン力が非常に大きな力だということが分かります。
 クーロン力は本来電気力ですが、磁気力についても同じ法則が成り立ちます。
 磁気力の場合、Fは磁気力[N]、rは磁極間の距離[m]、qは磁極の磁気の大きさ[Wb]です。(磁力についてのクーロンの法則)
 電気と磁気には関係があります。なお、電流と磁界によって働くローレンツ力[N]について上の近似式(vは荷電粒子の速度、Bは磁束密度[A/m]、✕は外積)からやはり大きな力だということが分かります。

 クーロン力やローレンツ力は電磁力と言いますが、電磁力は重力などの万有引力などとは比較にならないほどの大きな力です。磁石の力や電気の力を侮ってはいけません。ただし、身の回りの磁石や電流は我々や身の回りの物体と相対的に小さいのであまり影響を感じません。電磁力がその真価を発揮しているのは原子レベルのスケールです。
 しかし電磁力が我々のスケールであまり影響を及ばさないのはただ単に色んな方向に働く力が打ち消し合って釣り合っているからで、一度向きが揃ってしまうと我々のスケールでも強力な影響を発揮します。

 ※スケールによって考えるべき力は変わります。しかし、こうした考えはつい最近一般的になりました。アインシュタインの相対性理論はこの点に真価があります。

【磁気帯びの仕組み】
 物質には強磁性、常磁性、反磁性という性質があります。物質を構成する原子の電子配置によって磁気特性は変わってきますが、例えば鉄やニッケルは常温では強磁性、水やカーボン化合物の多くは反磁性です。多くの物質は常磁性です。
 面白いのはガドリニウムで、強磁性と常磁性の境目となる温度(キュリー点)が19℃で、冷やすと磁石にひっつきます(強磁性)が、温めると磁石にひっつかなくなります。(常磁性)また水に超強力磁石を入れると水が左右に割れます。(磁石に反発する反磁性)これは旧約聖書の出エジプト記からモーゼ現象と言います。下らないネーミングです。

 時計の磁気帯びは強磁性である部品(鉄製歯車やゼンマイ)が磁化する事です。
〈磁化とは〉
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普通の状態の方位磁石です。
方位磁石は磁界を調べるのに便利です。

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磁石を近付けると力が働き、針が動きます。
この磁石は携帯電話のスピーカーからとったものです。
強力です。

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鉄釘(強磁性体)を近付けると針は動きません。

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しかし、5年ほど磁石にひっついていた鉄釘を近付けると、方位磁石は動きます。
これが磁化(残留磁化)です。


普通の鉄釘でも、そのままでは他の鉄釘を吸い寄せませんが、磁石と接触させると他の鉄釘を吸い寄せます。これも(これこそ)磁化です。

 強磁性体は構成原子がそれぞれ磁石のように磁極を持ち、相互に影響し合ってある一方に磁極が向かう「磁区」をつくります。普通ならば磁区は物体内で各方向の磁極の向き(磁気モーメント)が釣り合うような大きさで分布し、結果として磁界を持ちません。(下図左端)
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 しかし、外部の磁界の影響を受けて(外部の磁界による力を及ぼされて)磁界と同じ向きに磁極を持つようになる原子があります。それによって磁界の向きの磁区が大きくなり(上図中央)物体内部の磁気モーメントが釣り合わず、結果として磁界を持つようになります。これを磁化と言います。

 外部の磁界を取り払っても磁区が戻らなくなり、磁界を持ち続ける事があります。(上図右端)これを残留磁化と言います。
 時計の磁気帯びとは部品の残留磁化の事です。

【対策】
 現代はパソコンのハードディスクドライブやスピーカーなど、あちこちに強力な磁場があります。腕時計の磁化対策は各メーカーがいろいろと工夫していますが、やはり完全に磁化を防ぐ様な方法は無いというのが現状です。
 歯車に真鍮を使ったり、ゼンマイの材質を工夫して磁化しにくいようにしているようです。
日本工業規格、JIS規格ですと、第一種対磁は4800A/m、第二種対磁だと16000A/mの磁界の大きさでも機能を維持するそうです。
海外メーカーで単位にガウスを使ったりしているところもあります。モデル名としてはミルガウスも有名ですね。ロレックスの中で唯一私の好みに合いそうなデザインです。

 なお、電波時計では表示時刻と受信した時刻の差を監視、修正していますので、歯車が磁化して運針に影響が出ても修正されてしまって磁気帯びの影響が表れない場合もあるでしょう。カシオのオシアナスは磁気に強いという声がありますが、ただ単に修正されているだけだと思います。

 最高の対策は時計を磁気に近づけない事です。しかし、普通に過ごす分にはあまり気にしなくていいでしょう。私の時計の場合、強力磁石を時計に接触させて遊んだらいけませんでしたが、腕にはめてパソコンを使う分には磁気帯びしません。気になるなら時計に方位磁石を近づけてチェックしましょう。
 ※方位磁石で磁気帯びする事はありません。弱すぎます。

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