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水晶。石英【SiO₂】のよく発達した結晶が水晶と呼ばれる。
水晶の性質がクオーツ式時計に利用されている。クオーツ式時計に使われる水晶は時計会社で人工的に作られる。人工水晶は結晶の発達に最適な環境で作られるため、天然のものより遥かに質が良く、大きい。
写真の水晶は管理人のコレクション。怪しいパワーストーン店の隅の方で500円程で売っていた。ひとつの大きな結晶群の様に見えたが、幾つかの破片を石膏で固めたものだった。。。


今日は現在の腕時計の主流、クオーツ式について見ていきます。

【クオーツの強み、高振動】

 時刻を正確に刻む為にはどうしたら良いでしょうか。大昔は日時計を使っていました。日時計は太陽の見える向きが時間の経過で移ろうことを利用しています。しかし、太陽が見えない時には使えません。そこで水時計や火時計が発明されました。これらは時間の経過と共に起こる規則的な変化を利用しています。時間の経過と共に増える水かさ、燃えていく線香。この「規則正しい変化」で時間の経過を知るという発想が時計の真の意味での発明だったと言えるでしょう。
 現代的な時計は振り子の等速な往復運動、同じく等速なヒゲゼンマイの伸縮運動、といった規則正しい「振動」が利用されています。例えば1秒に6回正確に振動する振り子を用意したら、振り子の1振りで6分の1秒分だけ秒針を動かす様に歯車を組み合わせれば、時計になります。
 歯車の組み合わせ、つまり歯の数や回転数の数比の決定は数学的に行われます。振り子が正確に振動する限り、秒針の動きは絶対に正確になります。歯車が正確に作られていればですが。しかし、どうしても振動には誤差が生じます。そこで、時計を正確にするにはこの振動数を大きくし、1振動にかかる時間を短くすることが必要になります。1振動にかかる時間が短ければ1振動の些細な誤差がもたらす影響も小さくなるからです。
 故に、現代的な機械式時計が精度を上げる歴史は高振動化と共にありました。日本では1960年代には一秒に5.5振動でも高精度(例:GSセルフデーター)でしたが、すぐに10振動のもの(例:61GS)が現れ、さらに高精度になりました。
 しかし、時計の歴史を大きく変えたのがクオーツ式です。水晶は電流を流すと正確に一秒に約30000回振動する性質があります。この高振動こそがクオーツ式が正確である理由です。


 前置きが長くなりましたが、ここからクオーツ式の仕組みを見ていきます。

【クオーツ式ムーブメントの仕組み】

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写真はミヨタ(シチズンの子会社)の激安クオーツムーブメント、MIYOTA101Aと、その基盤です。
ムーブメントに組み込まれたコイルや基盤のicチップ、銀色の筒状の水晶振動子が見えますね。この銀色の筒の中に音叉型の水晶振動子が入ってます。
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 手書きの図で申し訳ありませんが、上の図がクオーツ式ムーブメント(アナログ)の仕組みです。ちなみに私が描きました。
 水晶振動子に電流を流し、一秒に約30000回の振動をさせます。この振動をicで数え、1秒に1回のパルス信号にします。この電気信号が1秒に一回コイルに流れ、磁界を発生させることで、磁界の中にセットされた超小型のモーターが回転します。このモーター軸に歯車をつけて秒針の付いた歯車をモーター1回転ごとに60分の1回転させるように歯車を組み合わせてあります。
 分針、時針は秒針の歯車の回転に合わせてそれぞれ回転するようにされています。時計の動きの基準は基本的に秒針にあります。

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 デジタル時計の仕組みです。デジタル時計もicで水晶振動子の振動を数えますが、表示をディスプレイにするための処理もicで行われます。ストップウォッチ、タイマーに利用することも容易です。
 デジタル時計は単に時刻を示すだけではなく多くの機能を備え、ディスプレイ表示という特性から、時計と言うよりはむしろコンピューターに近い存在です。実際、現在のデジタル腕時計のicチップの演算能力はアポロ宇宙船の船載コンピューターに匹敵、または上回っているとも言われています。
 アポロといえばアポロ13号の事故で宇宙船の電力が失われ、再突入時のコンピューターの自動操縦の為の電力を残すために電力消費を抑える必要があり、手動で軌道修正の噴射を行ったのですが、この時噴射時間は司令室の管制官達が計算尺で計算し、飛行士は装備していたオメガのスピードマスター(手巻き機械式)で噴射時間を測ったそうです。これはかなり有名な話ですね。今もスピードマスターは宇宙船での使用を考慮して風防がガラスではなくプラスチック製です。

【精度向上の工夫】
 水晶振動子の振動は気温によって微妙に変化します。そこで高精度な「年差クオーツ」などでは温度変化を測定し、修正する機能をもつicを使っています。
 その他水晶振動子の経年劣化をムーブメント組み込み前に起こし、組込後に振動数が変化しないようにするエージングを行うなどの工夫も見られます。
 クオーツ式はかなり高精度ですが、自動で時刻を修正する電波受信機能をつけて電波時計とすることでより正確な時刻を示すことができます。最近はさらにGPS衛星から時刻情報を受信するものもあります。これらは受信できない時は普通のクオーツ時計です。

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