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〈お断り〉
とにかく前置きが長くなっているのでご注意!
読みたくない方はモデルの詳細の項までスクロールしてください。
筆者の偏見がかなり反映されています。(特に長文がダラダラ続いている箇所)


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○関連リンク集○※セイコー様、無断リンク失礼します

➣セイコーHD公式サイト(トップ)

➣プレザージュ ブランドサイト(セイコー公式サイト)

➣SARK007製品詳細(セイコー公式サイト)

➣PRESAGE Brand Site(Global Official Site) ※Of cource, written in English

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 かなり久々の更新ですね。ずっとブログの方は放置していたのですが、それはネタが無かったのと、ちょっと忙しい時期が続いたからです。
 私はあまり身の周りのモノをすぐに替えたり、取っ替え引っ替えローテーションしたりする事ができない性格で、一度気に入ったものをすごく長く、しかも毎日それだけを使うんですね。(これを貧乏性と云う)なので時計を新しく買うことが無く、よってネタも無い、と言うわけだったのです。
 あとは財政難も影響しています。時計の代わりに本を買っていたのでただでさえ少ない小遣いがすっからかん。チプカシも買えない有様でした。(むしろこっちが主要因だったり)
 前置きが長くなりましたが、上の写真の時計を買いました。清水舞台でした...
 まだ新しいモデルですし、ネット上でも全くと言ってよいほどレビューを見ないのですが、折角なのでレビューさせていただきます。

【PRESAGE‐プレザージュ】
 昔日産のミニバンにありましたねぇ。私には結構懐かしい響きです。ただし、車は「プレ"サ"ージュ」、時計は「プレ"ザ"ージュ」です。商標の問題か、クレドールと同じフランス語発音にしたのか。
 昨年秋にセイコーHDが「機械式に力を入れる」と新しい営業戦略を発表しました。そして、このプレザージュの新モデルがたくさん発表されました。これから成長が期待されるブランドです。
 「日本製の機械式」が売りで、「本物の自信」を持っているそうです。クオーツ時代に一度機械式を大幅縮小しておいて調子の良い経営戦略です。当時、国産機械式はすごい勢いで発展していたのに中断してしまってたくさんのもの(人やノウハウ)を失ったのではないでしょうか。高度経済成長期末の日本の製造業の経営はどこもこういうミスを犯していました。製造のオートメ化はコスト削減や均一な製品製造の役には立ちますが職人を失います。(結果として雇用が落ち込み、国内市場が衰退、景気が低迷して企業も困るという皮肉)
 職人や設計者の方々が復興して下さっていますが、現在の6Rや4R、7Sも当時の70系の現代版であって新規とは言いにくいと思います。良い意味では熟成されてると言えて信頼性の高さにつながりますが、悪い意味では未来につながる新しさが無い。信頼性や実用性重視の方針は素晴らしいし、大好きですが、機械式回帰の中で当時の新進気鋭に溢れたセイコーのバイタリティを取り戻して面白いメカを出してくれる事を期待しています。9Sがリバーサーを採用したり、MEMSのような技術開発、新SPRONの開発、トゥールビヨンは良い流れだと思います。

 セイコーの機械式のラインナップはGS、クレドール、ガランテ、プロスペックス、プレザージュ、メカニカル、そしてセイコーセレクション(限定品のみ)、以上のブランドで展開されています。以前はセイコーセレクションに名前が変わる前のスピリットに6R搭載のメカ時計が有ったのですが、セイコーがもったいないと気づいたようで消えました。ブライツにも有ったのですが気づいたら消えてましたね。おそらくはプレザージュに一本化するのでしょう。この流れだとメカニカルが心配です。SARB033,035など安価な6R搭載モデルは今となっては稀有ですから。

 ところで、プレザージュには3つのクラス分けがされています。※国内のみ。海外はPrestige,basicの2クラスで、モデルの展開も異なる。

Prestige(プレステージ)Line:プレザージュ中最高ランク。高価であり、6R15(3針デイト)、6R27(針表示デイデイト、パワーリザーブ計付)、8R48(クロノグラフ)を搭載。ザラツ研磨モデル、琺瑯、漆ダイヤルの限定品が該当。

Upgrade(アップグレード)Line:プレザージュの中では高級。公式HPではプレステージラインと一緒に並んでいて違いがわかりにくい。6R24(レトログラード式デイデイト、パワーリザーブ計付)はこのクラスのみの展開。他6R15、6R27を搭載。

Basic(ベーシック)Line:プレザージュの基本。6Rはなく、4R系のみ。4R39(GMT、オープンハート)、4R38(オープンハート)、4R36(3針デイデイト)。今のところ4R57(針表示デイト、パワーリザーブ計付)、4R35(3針デイト)搭載はなし(海外はあり)。

 4R系は全て6振動、日差+45s~-35s。6R系では、6R15のみ6振動、他は8振動。日差は全て+25s~-15s。
 なお、全てのムーブメントがトライマチック(ダイヤショック、マジックレバー巻き上げ、SPRON)で、手巻き機能付自動巻きの日本製です。
 4R37(GMT)搭載のモデルもあっても良いのでは、と個人的には思います。


【SARK007 - モデルの印象】

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正面から

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大きさはこんな感じ。(腕周り16cm)

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厚さはこれくらい。

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ザラツ研磨されたケース表面。

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ブレスもダイヤシールド。
もちろん無垢。エンドピースも無垢材。

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夕方の新幹線の中で撮りました。
中間色照明だとこんな感じです。

 イメージは伝わったでしょうか。

○諸元○
・自動巻きクロノグラフ SARK007
・キャリバー:SEIKO 8R48
・振動数:8振動/秒(28800bph)
・クロノグラフ:12時間計(目盛り0.5時間刻み)、30分計(目盛り5分刻み)、秒目盛り4分の1秒刻み(8分の1秒まで計測)
・秒針停止、手巻き機能、デイト付
・最大持続時間:約45時間
・公称日差:+25~-15s
・重量:184g
・ケースサイズ:縦47.3mm x 横40.7mm x 厚さ14.9mm
・平面サファイアグラス風防
・ステンレスケース、ガラス製シースルーバック
・ザラツ研磨(ケース)
・コンフォテックス(スーパークリアコーティング、ダイヤシールド)
・トライマチック(ダイヤショック、マジックレバー巻き上げ、SPRON)
・日常生活用強化防水10気圧
・耐磁:JIS1種

 クロノグラフと普通の3針とで最も特徴的な違いは秒針です。クロノグラフの場合秒針は時分針と同軸ではなく、ちっちゃい秒針が別についています。8R48の場合、3時位置のスモールダイヤルが時計の秒針です。他は6時位置が12時間計、9時位置が30分計です。

○印象○

 エッジが鋭いのでシャープなフォルムです。クロノグラフであることと相まって精悍な印象です。それでいてタキメーターなどを備えないシンプルなデザイン故にクロノグラフとしては非常に上品でもあります。
 プレザージュの他の時計、特に3針はデカアツで、私はチョットなぁ、と思っていましたが、SARKシリーズはクロノグラフとしては常識的な大きさと厚さで、巻いてしまえばデカアツには感じません。
 気になったのは針です。ドーフィン針で、中心を峰としてカットされたデザインですが、片側は梨地、もう片側はポリッシュと非対称になっていて、少々謎です。GSの針だったら文句なしなのですが、差別化のためでしょうか。しかし、視認性は良いです。
 インデックスの仕上げも丁寧で、歪みがありません。インデックスは多面カットで、上面にはヘアラインがはいっています。その為ダイヤルにとけ込んでしまってインデックスが見にくい、という事はないです。12、3、6、9、時のインデックスは他よりも太く、中心に溝がはいっています。
 なお、センターセコンド(クロノグラフの秒針)の先の方、スモールダイヤルの秒針、30分計、12時間計の針は白色に塗装されています。
 夜光は一切ありません。
 黒文字盤の色は少し茶がかった黒色です。控えめなツヤのある滑らかな文字盤です。サンレイには全くなっていません。スモールダイヤルはつや消しの梨地になっています。

 時計店でGSも見ましたが良いですね。GSの方がややエッジが柔らかです。絶妙に角がとられています。SARK007のケースのエッジはちょっとカドが立ち過ぎです。
 GSのメカニカルは倍の値段ですので却下。いずれ買うでしょうが今回はクロノと決めていたので。。。でも、55周年記念、限定のGSロゴ透かし入り文字盤のモデル(SBGR097)も有ったので危うく紺色の紙袋に紺色の箱を入れて帰るところでした。メカニカル唯一の紺文字盤は欲しかったので。

○クロノグラフの操作○

 プッシャーボタンは2.5mm程のストロークで、2mmほどの遊びがあり、グッと力を入れるとカチッと音がして作動します。スタートボタン、リセットボタン共にボタンの押し心地は硬いです。(遊びの部分はユルユル)
 フライバックもできなくはないですが、推奨はされていません。

〈動画〉
1080p/30fpsHD
1min14sec



上のリンクで飛べない方はこちら
https://m.youtube.com/watch?v=tc1kZPtqwAw

 プッシャーボタンはかなり固く感じますが、誤動作しにくく、操作の安定性が高いとも言え、信頼性は高いです。
 垂直クラッチ方式故にスタート時の針飛びも無いです。

【ムーブメント‐8R48】

 8R48はセイコーインスツルが自社開発した国産自動巻き機械式クロノグラフムーブメントです。
 機構の特徴は以下の通り。

・作動方式はピラーホイール(コラムホイール)式を採用。操作性、確実性、耐久性を高めている。ピラーホイール式は工作難度も高く、高級機に多い。

・伝達方式には垂直クラッチ方式を採用。これは比較的新しい方式で、見た目のダイナミックさには欠けるが、針飛びの無い精度と実用性が高い。

・リセット方式には独自開発された三叉ハンマーを採用。複数の針を1つのパーツでリセットするため、確実性と耐久性が高い。

※作動方式:スタート・ストップボタンを押してクロノグラフを作動させる機構の方式。スイッチの種類。
※伝達方式:秒針車からの動力をクロノグラフの秒針車に伝える機構の方式。自動車で言うクラッチ。
※リセット方式:リセットボタンを押して表示をリセットする機構の方式。

 型式としては、私の購入したSARK007には8R48Aが搭載されていました。時計店に在庫が無くてセイコーから取り寄せたのでおそらく現行でしょう。

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 コート・ド・ジュネーブ彫りされたローターに金色の墨入れがされた刻印があります。テンプは金色で、2足です。ETAのように振動数でパーツの色が違うようです。
 8Rは通常の3針キャリバーにモジュールになったクロノグラフを載せた、いわゆる2階建て(下の写真参照)なので裏スケからクロノグラフの機構が見えません。6R15を8振動化してクロノモジュールを載せているそうですね。6R系の8振動モデルも同様です。
 7Sには無かったが6Rで追加されたブリッジをよく見ると、、、丸穴車の軸受がルビーです。上下共にルビーです。なので6R15は23石、7S26は21石です。8振動になって負荷が増大している筈ですが、懸念されていた(一部で)香箱車の軸受けもメタル→ルビーになってるんでしょうか。6Rの8振動には3針は無いので断言はできませんが、8振動キャリバーは増大する負荷に対応して香箱車の軸受けをルビーにしてると良いのですが
 どなたか分解して写真アップして下さい。ありがたく拝見しますw

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写真中央がルビーになってる丸穴車の軸受け。



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(セイコー公式サイトhttp://www.seiko-watch.co.jp/presage/design/より無断転載)
3階建てにも見えなくもないですが、ローターが通る段差でそう見えるだけです。


 まだ買ったばかりなので、いずれ落ち着いてから精度を実測してみたいと思います。クロノメーター規格、GS規格とも比較してみます。


 個人的にはかなり良い時計です。物欲が胸焼けするほど満たされます。
 ファイブは純粋に趣味として健全に楽しめますが、この価格帯ではレビューも慎重にならざるをえません。長文な上に色々と面倒な言い回しで溢れていましたが、推敲してこれですので申し訳ない。最後まで読んで下さった方、お疲れ様です。
 参考になれば幸いです。


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